ストレスチェック制度の概要
ストレスチェックは、「労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること」を目的として、現在、常時50人以上の労働者を使用する事業場には年1回以上の実施が義務付けられています。
50人未満の事業場では努力義務とされていたストレスチェックですが、2025年5月14日に労働安全衛生法が改正されたことにより、公布後3年以内に、50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が「義務」となる予定です。
まずは制度の全体像を把握しましょう。
| ストレスチェックの実施 | ||
|---|---|---|
| いつ | 1年間に1回 | |
| どこで | 任意の場所で | |
| 誰が | 実施義務があるのは | 事業者 |
| 実施者は | 医師 保健師 検査を行うために必要な知識についての研修(厚生労働大臣が定めるもの)を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師 | |
| 受けるのは | 労働者(従業員) | |
| 何を | ストレスに関する個人調査 | |
| なぜ | メンタルヘルス不調となることを未然に防止するため | |
| 方法 | 調査票によるチェック方式 | |
ストレスチェックの流れ
次に、ストレスチェック全体の流れについて見ていきましょう。
大きく分けて、準備・実施・通知(面接指導)・分析の4つの段階があります。
- Step 1ストレスチェック制度の導入準備(事業者)
- 方針の表明
- 実施方法等について、衛生委員会等での調査審議
- 従業員への説明
- Step 2ストレスチェックの実施(実施者)
- 調査票を従業員へ配布
- 回答後の調査票を回収
- データ集計
- Step 3結果の通知・面接指導
- 結果の通知(実施者→本人)
- 高ストレス者に対しては、医師の面接指導を勧奨(実施者→本人)
- 医師の面接指導を希望する者は、事業者へその旨を申し出(本人→事業者)
- 医師の面接指導の希望を受けた場合は、事業者が面接指導を手配(事業者→医師)
- 医師の面接指導実施(本人⇔医師)
- 医師の面接指導後、事業者は、医師から意見聴取(事業者⇔医師)
- 必要に応じて就業上必要な措置の実施(事業者)
- Step 4結果の保存・集団分析等(事業者)
- 結果の保存(5年間)
- 結果の報告(管轄の労働基準監督署へ)
- 集団分析
- 職場環境改善措置の実施
ストレスチェックの実施
対象となる労働者
ストレスチェックは、従業員のうち、次の要件を満たすものに対して実施します。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者(契約期間が1年以上である者・契約更新により1年以上使用されることが予定されている者・1年以上引き続き使用されている者を含む)であること
- 1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
実施者
- 医師
- 保健師
- 検査を行うために必要な知識についての研修(厚生労働大臣が定めるもの)を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師
実務担当者
事業場の「ストレスチェック制度担当者」となる人です。事業者が指名します。
- メンタルヘルスを推進する担当者を指名することが望ましい
- 人事課長など、人事権を持つものを指名することも可
実施事務従事者
実施者の指示によりストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力又は記録の保存等を含む)に携わる者(実施事務従事者)を選任することもできます。
選任にあたっては次の注意点があります。
- ストレスチェックを受ける従業員に対して直接的な人事権を有する者は実施事務従事者になれません
- 人事担当の部署の従業員は、人事権のない者に限り実施事務従事者になることができます
調査票(質問票)
ストレスチェックの実施は、「調査票(質問票)」を用いて行います。
実施方法は、紙ベースでの実施、WEBでの実施、いずれの方法でも可能です。
使用する調査票は、以下の3項目を含み、従業員のストレスの程度を点数化して評価するものであることが必要です。
- 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
(ストレスの原因) - 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
(ストレスによる心身の自覚症状) - 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
(周囲のサポート)
上記の条件を満たしていれば、事業者が独自に調査票を作成することもできますが、調査項目を決定するにあたっては、実施者からの意見聴取や衛生委員会等で調査審議を行う必要があります。
厚生労働省が推奨するのは57項目で構成されている「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」です。
衛生委員会等で審議する内容
事業者が表明した方針を実施するために、次のことを調査審議します。
- ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
- ストレスチェック制度の実施体制
- ストレスチェック制度の実施方法
- ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
- ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
- ストレスチェック結果の記録の保存方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
- ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
- 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できることの周知方法及び意思表示の方法
- 労働者に対する不利益な取扱いの防止
労働者数50人未満の事業場では衛生委員会の設置義務はありません。委員会を設けていない場合は、関係労働者から意見を聴き、審議すると良いでしょう。
参考:安全衛生に関するQ&A「安全委員会、衛生委員会について教えてください」
結果の通知
実施者が集計したデータは、封書または電子メールで、実施者から本人へ直接通知されます。
通知項目は次のものです。
- 個人のストレスプロフィール
- ストレスの程度
- 面接指導の対象者か否かの判定結果
ストレスチェックの結果は、本人が同意しなければ事業者に通知できません。
この同意はストレスチェックの結果を通知した後に取得しなければならず、事前の同意取得は認められません。
医師による面接指導
高ストレス者と判断された従業員に対しては、結果の通知をする際に、医師の面接指導を受けることが勧奨されます。
医師の面接指導は、本人からの申し出があった場合に受けることができるものであり、強制はできません。
受けることを希望する場合は、本人から事業者に対して、その旨申し出をします。
事業者は、従業員が面接指導の申し出をしやすいよう、あらかじめ窓口を設けておくと良いでしょう。
面接指導を希望する旨の申し出を受けた場合は、事業者が、専門の医師に依頼し、必要な情報の提供、面接指導の日時決定を行います。
医師の意見聴取・就業上必要な措置
医師の面接指導を実施した後は、遅くとも1か月以内に、医師から就業上の措置について意見聴取をします。
必要な場合には、本人の実情を考慮した上で、対応可能な就業上の措置(就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少など)を講じます。
なお、これら面接指導の結果に基づく措置が、人事上の不当な扱いとならないよう十分な配慮が必要です。
集団分析・職場環境改善措置の実施
ストレスチェックのデータを活用した「集団分析」及び「職場環境改善措置の実施」の実施は、努力義務です。
実施をする場合は、次の点に留意することが必要です。
- 集団分析
一定規模の集団に分けて分析をします。
また、個人が特定されない方法で実施するよう留意する必要があります。
集団分析の結果は、分析対象の従業員の個別同意がなくても実施者から事業者に提供できます。
ただし、10人以下の集計・分析結果を事業者が提供を受ける場合は、個人が特定されるおそれがあることから、分析対象となった従業員全員の同意が必要とされています。 - 職場環境改善措置の実施
集団分析の結果を基に、実施者や医師などの意見・助言、管理監督者や従業員から得られた日常の情報・意見等を参考にして、勤務形態又は職場組織の見直し等、職場環境を改善するための措置を講じます。
ストレスチェック制度Q&A
Q:ストレスチェックや面接指導の費用はだれが負担するもの?
ストレスチェック及び面接指導の実施は、法で事業者に義務が課されているものであるため、当然に事業者が費用負担すべきものです。
Q:ストレスチェックや面接指導を受けるのに要した時間について、賃金を支払う必要がある?
賃金の支払いについては労使で協議して決めることになりますが、従業員の健康の確保は事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、賃金を支払う(所定労働時間内で実施する)ことが望ましいです。
Q:長期出張や長期の病休のためにストレスチェックを受検できなかった者は、どうするべき?
業務上の都合や、やむを得ない理由でストレスチェックを受けることができなかった者に対しては、別途受検の機会を設ける必要があります。
長期の病休者については、ストレスチェックを実施しなくても差し支えありません。
Q:医師の面接指導の後、事業者が行う医師への意見聴取を、本人が拒む場合はどうすれば良い?
面接指導を踏まえた就業上の措置に関する医師の意見は、必要な情報に限定すれば、本人の同意が無くても事業者に伝えることができる仕組みです。
ただし、円滑に行うためには、事前に本人にその旨説明し、了解を得た上で実施することが望ましいものです。
事前に了解が得られない場合は、「法に基づく面接指導は事業者に結果が伝わる仕組みである」旨を説明し、本人の了解を得た上で、法に基づく面接指導としてではなく、事業者に伝えないことを前提に、通常の産業保健活動における相談対応として実施することも考えられます。