過半数代表者とは?
「過半数代表者」とは、法令で定められた方法によって選出された、事業場の労働者の過半数を代表する者のことをいいます。労働者の過半数で組織する労働組合(過半数労働組合)がない事業場は、この「過半数代表者」の選出が必要となります。
本記事では、「過半数代表者」の役割、要件、選出方法、任期などを詳しく解説します。
過半数代表者の役割
「過半数代表者」の主な役割は、次の2つです。
- 労使協定の締結
- 就業規則作成・変更時における意見書の提出
それぞれ詳しく見ていきましょう。
労使協定の締結
労使協定とは、法に定められた事項について、一部の適用を除外する場合や、特定の制度を導入する場合に、労働者と使用者が合意の上で取り交わす書面契約のことです。過半数代表者は、この「労使協定」の締結当事者となります。例えば、労働基準法で定める労使協定には、次のようなものがあります。
| 労使協定の種類 | 労働基準法 | |
|---|---|---|
| 1 | 任意貯蓄金 | 第18条 |
| 2 | 賃金控除 | 第24条 |
| 3 | 賃金のデジタルマネー(電子マネー)払い | 第24条 |
| 4 | 1か月単位の変形労時間制 | 第32条の2 |
| 5 | 1年単位の変形労働時間制 | 第32条の4 |
| 6 | 1週間単位の非定型的変形労働時間制 | 第32条の5 |
| 7 | フレックスタイム制 | 第32条の3 |
| 8 | 一斉休憩の適用除外 | 第34条 |
| 9 | 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定) | 第36条 |
| 10 | 代替休暇 | 第37条第3項 |
| 11 | 事業場外労働のみなし労働時間制 | 第38条の2 |
| 12 | 専門業務型裁量労働制 | 第38条の3 |
| 13 | 年次有給休暇の計画的付与 | 第39条第6項 |
| 14 | 年次有給休暇の時間単位付与 | 第39条第4項 |
| 15 | 年次有給休暇の賃金 | 第39条第9項 |
労働基準法に基づく労使協定以外にも、育児介護休業等に関する労使協定や、派遣法に基づく労使協定などがあります。
就業規則作成・変更時の意見書提出
就業規則の作成・変更に際しては、その事業場における労働者の代表として、会社に対して意見を述べる役割を持っています。過半数代表者の意見を記した「意見書」は、作成・変更した就業規則とあわせて、会社が所轄労働基準監督署へ提出します。
過半数代表者の要件
1.事業場の全労働者の過半数を代表していること
正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めた全ての労働者の過半数を代表している必要があります。
2.民主的な手続きで選出された者であること
「民主的な手続き」とは、次の内容を満たしたものであることが求められます。
- 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施されていること
- 事業場のすべての労働者が選出手続きに参加していること
- 労働者の過半数が支持していることが明確になる手続きであること
具体的には、次のような方法があります。
| 投票 | 候補者に対する無記名・有記名投票 |
| 挙手 | 労働者全員が集まった場での挙手による確認 |
| 労働者による話し合い | 労働者全員の協議による決定 |
| 持ち回り決議 | 候補者を周知し、書面や電子メール等により信任を得る方法 |
過半数代表者となる者を使用者が指名した場合や、社内親睦会の幹事などを自動的に選任したような場合は、「過半数代表者」と認められず、労使協定を締結しても、その労使協定は「無効」となる点に注意が必要です。
3.管理監督者でないこと
労働基準法第41条第2号に規定する「監督又は管理の地位にある者(管理監督者)」を過半数代表者とすることはできません。「管理監督者」とは、一般的には、部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。
過半数代表者の任期
過半数代表者の任期は、法では定めがありません。以下の2つのパターンで運用されることが一般的です。
- 手続きの都度選出する
特定の労使協定を締結するために、その都度選出する方法 - 任期を決めて選出する
1年や2年といった期間を定め、その期間内に発生する労使協定の締結や就業規則の意見聴取をすべて担当する方法
次の表は、「独立行政法人労働政策研究・研修機構」が行った、事業所規模別の調査結果です。
「手続の都度選出」する方法は、事業所規模が小さいほど多く、「任期を決めて選出」する方法は、事業所規模が大きいほど多くなっていることがわかります。(調査時点:2025年5月1日)
■過半数代表者の選出の頻度(%)
| 事業所規模 | 手続きの都度選出 | 任期を決めて選出 | その他 | 無回答 |
|---|---|---|---|---|
| 4人以下 | 74.2 | 18.8 | 2.4 | 4.6 |
| 5~9人 | 70.4 | 23.8 | 3.1 | 2.7 |
| 10~29人 | 73.0 | 20.7 | 3.6 | 2.7 |
| 30~99人 | 57.5 | 35.6 | 5.1 | 1.8 |
| 100~299人 | 43.5 | 50.8 | 4.4 | 1.4 |
| 300人以上 | 22.9 | 69.4 | 5.1 | 2.5 |
任期を決めて選出する場合は、任期期間内に締結する労使協定を明確にしたうえで、選出手続きを行う必要があることに留意しましょう。
参考:集団的労使コミュニケーションの在り方(過半数労働組合・過半数代表者等)について
過半数代表者の選出手順
前述の「過半数代表者の要件」を満たしていれば、特段の手順の指定は、法令上されていません。
次の流れで進めると良いでしょう。
- Step1過半数代表者の「任期」を決める
一般的には次の2パターンがあります。
・手続きの都度選出する
・任期を決めて選出する - Step2締結する労使協定等を明確にする
任期を決めて選出する場合は、その期間内に締結することが想定される労使協定等を明確にしておきましょう。
- Step3選出方法を決める
事業場の全労働者の意思表示を集約しやすい方法を決定します。
候補者を募って、その中から選出してもらう方法もあります。 - Step4従業員に選出手続きについての説明を実施
選出方法や回答期限が決まったら、従業員に対して説明を行いましょう。
- Step5過半数代表者を選出する
一度の手続きで全労働者の「過半数」の支持を得られない場合は、徐々に候補者を絞り、手続きを繰り返します。最終的に「過半数」労働者の支持を得た者が、過半数代表者となります。
また、「過半数代表者」は、事業場の全労働者の過半数支持を得た者である必要があります。選出において回答の提出がない従業員がいる場合は、意見の確認ができるまで、電話や対面の機会を設ける等の必要があることにも留意しましょう。
会社の義務
会社には、過半数代表者に対して、次の義務があります。
過半数代表者であること、なろうとしたこと、または、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、解雇、賃金の減額、降格等労働条件について不利益な取扱いをしてはいけません。
過半数代表者が、その役割を円滑に遂行することができるよう、必要な配慮を行わなければいけません。
例えば、全労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器やシステム(イントラネットや社内メール等)、事務スペースの提供を行う、等が挙げられます。