就業規則とは
就業規則とは、労働者の労働条件に関することや、職場内の規律などを定めた「職場における規則集」です。
職場でのルールを定め、労使双方がそれを守ることは、労使トラブルの未然防止にも繋がるため、就業規則の役割は重要です。
常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、労働者代表等の意見書を添付して、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則作成・変更時の「義務」
就業規則の作成(または変更)にあたっては、次の3つの「義務」があります。
事業場ごとに作成する義務
就業規則は、常時10名以上の労働者を使用する事業場ごとに、作成することが義務づけられています。
労働者とは、
「正社員」に限りません。
正社員のほか、「パートタイム」や「アルバイト」等、雇用契約を結ぶすべての者を含みます。
(派遣労働者は派遣元と雇用契約を結んでいるため、派遣先の労働者には含まれません。)
「常時10人以上」とは、
時として10人未満になることがあっても、常態として10人以上である場合を含みます。
例えば、繁忙期に臨時のアルバイトを雇用したために、一時的に従業員が10人になった場合は、「常時10人以上」にはあたりません。
しかし、従業員数10人の会社で退職者が1人出て一時的に10人未満になったとしても、「すぐに代替要員の採用をする」というようなときは「常時10人以上」にあたると考えられます。
就業規則は、「企業単位」ではなく「事業場単位」で作成をしなければならない点にも注意しましょう。
ひとつの企業でも、事業場の規模でみると、作成義務の有無は下表のように異なります。
| 事業場の規模 | 労働者数 | 就業規則の作成義務 |
|---|---|---|
| 本社 | 60人 | 義務あり |
| A支社 | 30人 | 義務あり |
| B営業所 | 5人 | 義務なし |
「労働者数10人未満」の事業場でも、就業規則を作成し、労働者に周知をすれば、その就業規則は法的効力を持ちます。労働基準法上は作成義務がない事業場でも、「作成することが望ましい」とされています。
参考:労働基準法第89条
労働基準監督署へ届け出る義務
作成(または変更)をした就業規則は、事業場の所轄労働基準監督署へ届け出る義務があります。
事業場ごとに所轄労働基準監督署が異なる場合は、提出先の労働基準監督署も変わります。
すべての事業場で本社と同じ就業規則を作成した場合は、次の各号いずれも満たす場合に限り、本社の所轄労働基準監督署へ一括して届け出を行うことも可能です(本社一括届出)。
- 本社の就業規則と内容が同一であること
- 本社を含む事業場の数に対応した必要部数の就業規則、及び、事業場ごとに作成した意見書の正本を提出すること
- 各事業場の名称、所在地、及び、所轄署長名が記載された一覧表を添付し、本社の所轄署長に届け出ること
- 労働基準法第89条各号に定める事項について、本社で作成された就業規則と各事業場の就業規則が同一の内容のものである旨を附記すること
- 本社の就業規則と内容が同一であること
- 「事業の名称」・「事業の所在地(電話番号)」・「業種」・「労働者数」・「管轄労働局」・「所轄労働基準監督署長名」・「労働保険番号」とともに、「一括届出事業場一覧」を添付し、本社の所轄署長に届け出ること
- 意見書は、各事業場ごとに作成したものを、電子媒体(PDF)で添付すること
届出の対象となる「就業規則」には、就業規則に関連する諸規程(賃金規程や旅費規程など)も含まれます。
参考:労働基準法第89条
従業員へ周知する義務
就業規則は、作成・届出をするだけでなく、従業員へ周知をしなければなりません。
事業場の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって周知をしましょう。すべての従業員を対象としたグループウェアで公開する方法や、クラウドストレージに保存して常時閲覧可能な状態にしておく等の方法もあります。
参考:労働基準法第106条
就業規則に記載する事項
絶対的必要記載事項
就業規則に必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)は、次の事項です。
- 労働時間に関すること
- 賃金に関すること
- 退職に関すること
| 労働時間に関すること | 始業及び終業の時刻 休憩時間 休日 休暇 交替制の場合には就業時転換に関すること |
| 賃金に関すること | 決定方法 計算方法 支払方法 締切日・支払日 昇給に関すること |
| 退職に関すること | 退職事由 解雇事由 |
参考:労働基準法第89条
相対的必要記載事項
また、定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)は、次の事項です。
- 退職手当に関すること
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関すること
- 表彰、制裁に関すること
- その他全労働者に適用されること
参考:労働基準法第89条
任意的記載事項
「絶対的必要記載事項」、「相対的必要記載事項」のいずれにも該当しない事項でも、職場のルールに関する事項を任意に記載することも可能です(任意的記載事項)。
会社の方向性を示す次のような事項があります。
- 会社のミッション、ビジョン、行動指針
- 従業員としての服務規律
参考:労働基準法第89条
就業規則の作成・変更、届出の流れ
現状の洗い出し
初めて就業規則を作成する場合は、まず、現在の労働条件や労務管理における課題を洗い出します。
変更をする場合は、変更の目的を明確にし、就業規則に記載すべき事項を選定しておきましょう。
就業規則(案)の作成
洗い出した内容について、具体的な検討を行い、就業規則(案)を作成しましょう。
自社で作成する場合は、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」等、信頼できるひな形をベースにして、自社の実情に応じた内容にアレンジする方法もあります。
専門家に依頼する場合は、社会保険労務士や弁護士に依頼すると良いでしょう。
意見聴取・意見書作成
就業規則(案)ができたら、事業場ごとに過半数労働者代表等の意見を聴いて、意見書を作成しましょう。
意見書には、労働者代表等の氏名を記載します。
この意見聴取にあたっては、労働者代表等の「意見」を聴くことは必要ですが、必ずしも「同意」を得ることまでは求められていません。仮に「就業規則の内容について反対である」という旨の意見が記載されていたとしても、労働基準監督署への届出は受理されます。
意見を踏まえた内容の検討
労働者代表等からの意見聴取で寄せられた意見を踏まえて、最終的な内容を検討しましょう。
反対意見が出た場合でも、そのすべての意見を反映させる必要はありませんが、意見を取り入れない場合は、その理由を丁寧に説明し、十分な理解を得ておくことが、労使トラブルの未然防止に繋がります。
労働契約法では、労働契約の原則を「労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」と定めています。
参考:労働契約法第3条第1項
届出
就業規則(案)と、労働者代表等からの意見聴取を踏まえた検討の結果、就業規則を完成させたら、事業場の所轄労働基準監督署へ届け出を行いましょう。
- 作成(または変更)した就業規則
- 就業規則(変更)届
- 意見書
- 返信用封筒
各事業場ごとに郵送で提出する場合は、上記のものをそれぞれ2部作成し、返信用封筒を同封して提出しましょう。受付印が押印された控えが返却されます。
e-Govから電子申請で届け出を行う場合は、PDF等の電子媒体で、意見書は各事業場ごとに用意し、その他のものは1部提出します。
本社一括届出を行う場合は、この記事で前述した内容を確認して下さい。
就業規則変更届の場合は、就業規則全体ではなく、新旧対照表(変更前と変更後の規定を左右に並べて比較した表)を提出することでも差し支えありません。
新旧対照表を提出しない場合でも、作成しておくと改訂履歴としてわかりやすいものとなります。
周知
就業規則が完成したら、すべての従業員に周知をしましょう。
周知時期は、所轄労働基準監督署への届出より前でも差し支えありません。遅くとも施行日の前日までには周知を済ませておきましょう。
以下のような周知方法があります。
- 職場の見やすい場所に掲示する
- 従業員がいつでも見ることができるような場所に備え付ける
- 従業員1人ひとりに就業規則を配布する
- すべての従業員を対象としたグループウェアで公開する
- すべての従業員がアクセスできるクラウドストレージに保存する
就業規則の効力
就業規則は、法令や労働協約に反する内容を定めてはいけません。
また、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準が適用されます。
参考:労働契約法第92条、第93条、労働契約法第7条、第12条、第13条
罰則
就業規則を作成・届出義務があるにもかかわらず、それを怠った場合には、会社に対して30万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考:労働基準法第120条