2025年法改正まとめ(1月~6月)

CoRunの労務コラム

はじめに

2025年も、人事労務にかかわる制度が大きく動いた一年でした。
育児休業、高年齢者雇用、安全衛生、扶養認定、通勤手当の非課税限度額、年末調整など、企業の実務に直結する改正が相次ぎ、対応に追われた企業様も多かったことと思います。
本記事では、2025年上半期に施行された労働関連の法改正、および実務に影響の大きい周辺制度の変更点を、施行日順に整理しました。

2025年1月1日施行

労働安全衛生法の一部手続電子申請義務化

一部の安全衛生関係の届出が電子申請義務化されました。

電子申請義務化された手続
  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

参考:労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます

2025年4月1日施行

育児・介護休業法の改正

男女とも仕事と育児・介護を両立できるように改正が進んでいる育児・介護休業法ですが、2025年は4月と10月の2回に分けて施行されています。
4月1日施行は次のものです。

義務化されたもの
  • 子の看護休暇の取得事由追加
  • 残業免除の対象拡大(小学校就学前の子を養育する労働者まで対象に)
  • 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業まで拡大
  • 介護休暇の取得範囲の拡大(継続雇用期間6か月未満の労働者も対象に)
  • 介護離職防止のための措置を講ずること(相談窓口の設置や、研修の実施等が必要に)
  • 介護離職防止のために個別周知・意向確認を行うこと
努力義務のもの
  • 3歳未満の子を養育する労働者に対し、テレワークを選択できる措置を講ずること
  • 要介護状態の家族を介護する労働者に対し、テレワークを選択できるよう措置を講ずること
選択する場合は対応が必要なのもの
  • 短時間勤務制度(3歳未満)を講ずることが困難な労働者に対し、代替措置としてテレワークを選択肢に追加すること

参考:育児・介護休業法改正ポイントのご案内

「出生後休業支援給付金」の創設

両親ともに14日以上の育児休業を取得した場合に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金に上乗せされる給付金の創設。

支給要件

  • 子の出生後8週間以内に14日以上の産後パパ育休または育児休業を取得していること

  • 産後休業後8週間以内に14日以上の育児休業を取得していること、
    または、育児休業の取得を要件としない場合の要件に該当していること
支給額
  • 休業開始時賃金日額の13%を最大28日間支給

参考:「出生後休業支援給付金」を創設しました

「育児時短就業給付金」の創設

2歳に満たない子を養育するために時短勤務した場合に支給される給付金の創設。

支給対象となる労働者
  • 雇用保険の被保険者
  • 2歳未満の子を養育するために育児時短就業している
  • 育児休業給付の対象となる育児休業から復職後に育児時短就業を開始している、または、育児時短就業開始日前2年間に被保険者期間が12か月ある

上記要件を満たした労働者に対し、次の全ての要件を満たした月に支給されます。

支給対象月
  • 初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
  • 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
  • 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
支給額・支給率
  • 育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額
    ※ただし育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます
    ※各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額を超える場合は超えた部分が減額されます

参考:「育児時短就業給付金」を創設しました

育児休業 延長手続きの厳格化

育児休業給付金は、保育所等に入れなかったため育児休業を延長した場合に、1歳6か月に達する日前まで(再延長で2歳に達する日前まで)支給を受けることができますが、延長をする場合の審査が厳格になりました。提出が必要な書類が増えています。

提出が必要な書類
  • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
  • 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
  • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)

参考:保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります

次世代育成法の改正

2025年4月1日以降に「一般事業主行動計画」を策定・変更する場合には次のことが求められます。

一般事業主行動計画
  • 育児休業等の取得状況の把握、数値目標の設定
  • 労働時間の状況の把握、数値目標の設定

また、くるみん、プラチナくるみん、トライくるみんの認定基準も次の項目で見直されています。

くるみん認定基準の見直し
  • 育児休業等を取得することができる女性有期労働者の育児休業等取得率
  • 男性の育児休業等取得率
  • フルタイム労働者の時間外労働・休日労働時間

施行日から2027年3月31日までの2年間のくるみん認定、プラチナくるみん認定又はトライくるみん認定の申請は、改正前の基準を適用することができますが、この場合に付与される認定マークは旧基準達成による認定マークとなります。

参考:次世代育成支援対策推進法の改正に伴い、くるみん認定、プラチナくるみん認定の認定基準等が改正されます

高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了

65歳までの雇用を確保する「高年齢者雇用確保措置」には経過措置が設けられていました。
この経過措置が終了し、全ての企業で以下いずれかの措置を講ずることが義務となりました。

全ての企業で義務となること
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの定年の引き上げ
  • 希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入

参考:高年齢者雇用確保措置を講じる必要があります

高年齢雇用継続給付の支給率の引き下げ

60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)が2025年4月1日以降の方から、支給率が変更(引き下げ)となります。

支給率
  • 60歳に達した日が2025年3月31日以前の方:各月に支払われた賃金の15%を限度として支給
  • 60歳に達した日が2025年4月1日以降の方:各月に支払われた賃金の10%を限度として支給

参考:高年齢雇用継続給付の支給率を変更します

2025年6月1日施行

熱中症対策の強化

熱中症の重篤化を防止するため「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けらました。

対象となる事業者

WBGT値28度以上又は気温31度以上の環境下で、次のいずれかの作業をさせる事業者が対象です。

  • 連続1時間以上見込まれる作業
  • 1日4時間を超えての実施が見込まれる作業
WBGT値とは

暑さ指数のこと。
熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 

参考:職場における熱中症対策の強化について

まとめ

2025年の上半期は、育児・介護の両立支援、高齢者の働き方、安全衛生など、働く人の「安心」と「安全」を支える制度が大きく動いた半年でした。企業の皆様には、必要な情報を早めに把握し、自社の運用を整えていくことが求められます。迅速に対応し、働きやすく魅力ある職場づくりを進めていきましょう。