【カスハラ対策】2026年に義務化されるカスハラ対策!企業に求められる対応を解説

CoRunの労務コラム

この記事でわかること

2025年6月、労働施策総合推進が改正され、全ての企業に対してカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止するための措置を講じることが義務化されることとなりました。
改正法の施行は2026年10月1日という方針が厚生労働省より示されています。
この記事では、カスハラ対策において、企業に求められることをわかりやすく解説します。

「ハラスメント」とは何か?

「ハラスメント」とは、他者に対して精神的または身体的に苦痛を与えるような行為(いじめ・嫌がらせ)を言い、広義には「人権侵害」の意味を含みます。
現在、日本で雇用管理上の措置義務が施行されているのは、以下のハラスメントです。

ハラスメントの種類防止のための根拠法
セクシュアルハラスメント
(セクハラ)
雇用管理上の措置義務男女雇用機会均等法11条1項
不利益取扱い禁止男女雇用機会均等法11条2項
パワーハラスメント
(パワハラ)
雇用管理上の措置義務
不利益取扱い禁止
労働施策総合推進法30条の2
妊娠・出産・育児休業等ハラスメント
(マタハラ)
パタハラ)
(妊娠・出産)
雇用管理上の措置義務
男女雇用機会均等法11条の3
(妊娠・出産)
不利益取扱い禁止
男女雇用機会均等法9条の3
(育児休業等)
雇用管理上の措置義務
育児・介護休業法25条
(育児休業等)
不利益取扱い禁止
育児・介護休業法10条
介護休業に関するハラスメント
(ケアハラ)
雇用管理上の措置義務育児・介護休業法25条
不利益取扱い禁止育児・介護休業法16条

これらに加えて、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が義務化されるのです。

カスハラ対策の義務化について

では、カスハラ対策は何故必要なのでしょうか?

義務化の背景

カスハラの事例件数は近年増加しており、社会問題化しています。
直近の調査では「過去3年間にあったハラスメントの相談件数」は、パワハラ、セクハラに次いで、「顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)」が多くなっています。

そして事例件数の推移は、「件数が増加している」「件数は変わらない」を合計すると、カスハラ(47.5%)は、パワハラ(44.7%)、セクハラ(37.1%)よりも多くなっています。

参考:令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査

カスハラが与える影響

カスハラが発生した場合、従業員、企業、他の顧客等が受ける影響として、以下のようなものが考えられます。

影響の内容
従業員・業務パフォーマンスの低下
・健康不良
・現場対応への恐怖、苦痛による配置転換
・休職
・退職
企業・対応に要する時間の浪費
・業務上の支障
・従業員離職に伴う人員確保
・金銭的損失
・ブランドイメージの低下
他の顧客等・利用環境、雰囲気の悪化
・業務遅滞によってサービスを受けられない、等

人口が減少し、労働力不足を課題に抱える現代の日本においては、これらの影響は看過できない問題です。
労働者の就業環境の整備を図ることを目的として、ハラスメント対策が強化されるのです。

カスハラ対策

カスハラの定義

「カスハラ」とは、次の3つの要素を全て満たす行為のことをいいます。

  1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、
  2. 社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
  3. 労働者の就業環境を害すること。

注意が必要な点としては、「カスハラ」とは顧客等からのクレームの全てを指すものではないということです。

企業に対して、商品やサービスの改善を求めて、返品・交換・追加を要求する行為

クレームのうち、要求の内容が著しく妥当性を欠く場合、または要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動

カスハラの判断基準となる「要求の内容が著しく妥当性を欠く場合」、「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例としては、以下のようなものが想定されます。

要求の内容が著しく妥当性を欠く場合の例
  • 企業の提供する商品やサービスに瑕疵・過失が認められない場合
  • 要求の内容が、企業の提供する商品やサービスの内容とは関係がない場合
要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動の例
  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・中傷・名誉棄損・侮辱・暴言)
  • 威圧的な言動
  • 土下座の要求
  • 継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
  • 拘束的な行動(不退去・居座り・監禁)
  • 差別的な言動
  • 性的な言動
  • 従業員個人への攻撃、要求

商品やサービスの品質改善につながる正当なクレームは、企業の成長にとって大切な「顧客等からの声」です。
これに対し、不当・悪質なクレーム(カスハラ)からは従業員をしっかりと守っていく必要があります。
カスハラ対策では、「正当なクレーム」と「不当・悪質なクレーム(カスハラ)」をしっかりと分けることができるよう、「判断基準」への理解を企業全体で深めることも重要なポイントです。

カスハラを防止するために講じる措置

カスハラを防止するために企業が講じる措置の具体的な内容は、今後、指針において示される予定です。
次の措置等を規定することが検討されています。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談体制の整備・周知
  • 発生後の迅速かつ適切な対応抑止のための措置

指針は現時点では公表されていませんが、厚生労働省が発行する「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラ対策の基本的な枠組みとして、以下の取組を挙げています。

■カスハラを想定した事前準備

  1. 基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
    ・カスハラの内容
    ・組織としての方針・姿勢の明確化
    ・カスハラから「従業員を守る」という方針・姿勢、その周知
    ・従業員の対応の在り方を周知、教育
  2. 従業員への相談対応体制の整備
    ・相談窓口の設置
    ・相談対応者の決定
    ・相談対応者への研修
    ・相談窓口、相談対応者を従業員全体へ周知
  3. 対応方法・手順の策定
    ・事例発生時の対応体制、方法等のルール
  4. 従業員への教育・研修
    ・正当なクレームとカスハラの相違
    ・判断基準や事例
    ・苦情対応の基本的な流れ
    ・顧客等への接し方のポイント
    ・記録の作成方法

カスハラが実際に起こっ対応

  1. 事実関係の正確な確認と事案への対応
    ・顧客、従業員から情報収集
    ・収集した情報と判断基準を照らし合わせてカスハラに該当するか否かを判断
    ・判断に応じて対応を決定
  2. 従業員への配慮措置
    ・対応者の数や、対応体制の決定
    ・メンタル不調対応
  3. 再発防止のための取り組み
    ・対応ルールの定期的な見直し
  4. 併せて講ずべき措置
    ・相談者のプライバシー保護措置・その周知
    ・相談をしたことによって不利益取扱いをしない旨の規定・その周知

カスハラが疑われる場合の対応としては、録音・録画・対応記録・時間の計測など検証可能な証拠を収集し、悪質性が高い場合には単独での対応をせず、複数名で対応することも必要です。

まとめ

カスハラの対応と、企業内におけるハラスメントの対応との大きな違いとして、カスハラは、行為者と企業の間に雇用契約関係が無いため、未然防止の措置や、行為者に対しての処分等が直ちに行いにくい点にあります。
基本方針の決定、判断基準や対応方法等のルール策定、従業員への研修等、企業の皆様の事前の備えにおいて、本日の記事が参考となれば幸いです。
CoRunの労務コラムは毎週月曜日更新予定です。
次の記事では、同じく2026年10月に対策義務化予定の「就活ハラスメント(求職者等に対するセクシュアルハラスメント)」について解説します。