労働条件通知書とは
「労働条件通知書」は、労働契約の締結の際に、労働条件のうち特に重要な事項について、使用者が労働者に対して通知する書類で、書面で交付することが義務付けられています。
参考:労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第4項
雇用契約書との違い
「労働条件通知書」とよく似た書類に「雇用契約書」がありますが、両者の違いは以下の2点です。
- 書面の交付について法的義務の有無
- 書類の種類(通知書と契約書の違い)
- 労働者の署名(捺印)の必要性
| 法的義務の有無 | 種類 | 労働者の署名(捺印) | |
|---|---|---|---|
| 労働条件通知書 | 書面での交付が必要 | 通知書 | 不要 |
| 雇用契約書 | 書面での契約締結は義務づけられていない | 契約書 | 必要 |
雇用契約(労働契約)は、労働者が使用者に使用されて労働すること、そして、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労使双方が合意すれば口頭でも契約が成立し、書面で雇用契約を締結することまでは義務付けられていません。しかし、一般的には、「契約」の証拠として、書面での契約締結が行われます。
また、雇用契約書に記載する内容は、労働条件通知書で記載すべき事項と重複しているため、実務上では、類似するこの2つの書類を1通にまとめて「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として交付する場合もあります。
参考:労働契約法第6条、民法第623条、民法第522条第1項、第2項
労働条件通知書で明示する事項
全ての労働契約締結時と有期労働契約の更新時
「労働条件通知書」で明示する労働条件は、大きく分けると次の2種類があります。
- 必ず明示しなければならない事項(絶対的明示事項)
- 定めがある場合には必ず明示しなければならない事項(相対的明示事項)
それぞれの明示すべき事項は、次の通りです。
- 労働契約期間
- 契約更新の有無・更新する際の判断基準・更新上限の有無と内容 ※1
- 就業場所 ※2
- 従事すべき業務内容 ※3
- 始業と終業の時刻、残業の有無、休憩時間
- 休日・休暇
- 労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関すること
- 賃金の計算方法、支払時期・支払方法
- 昇給に関する事項 ※4
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
※1 有期労働契約の場合
※2 雇入れ直後と、変更の範囲(将来の配置転換などによって変わり得る就業場所)
※3 雇入れ直後と、変更の範囲(将来の配置転換などによって変わり得る業務)
※4 書面の交付によらず、口頭によって明示しても差し支えない
- 退職手当の計算方法・支払方法・支払時期・支給される従業員の範囲
- 賞与・臨時賃金・最低賃金額
- 食費や作業用品などの労働者負担
- 安全衛生
- 職業訓練
- 災害補償、業務外の傷病扶助
- 表彰・制裁
- 休職
有期労働契約の場合の注意点
有期労働契約締結時と更新時
有期労働契約の締結時と更新時には、次のことを必ず明示する必要があります。
- 契約期間の定め
- 契約更新の有無
- 契約を更新する際の判断基準(更新がある場合)
- 通算契約期間または契約更新回数の上限の有無とその内容(更新がある場合)
また、更新上限を新設・短縮しようとする場合は、あらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)、更新上限を設定する・短縮する理由を労働者に説明することが必要になります。
説明の方法は、特定の方法に限られていません。
説明すべき事項をすべて記載した文書を交付する方法、個々の有期契約労働者ごとに面談等により説明を行う方法、説明会等で複数の有期契約労働者に同時に行う等の方法、等の方法があります。
無期転換申込権が発生する契約の更新時
有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)には、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することを申し込む権利(無期転換申込権)が発生します。
この「無期転換申込権」が発生する有期労働契約の契約更新時にはその都度、次のことを明示します。
- 無期転換を申し込むことができる旨の明示(無期転換申込機会)
- 無期転換後の労働条件
パートタイム・有期労働契約の場合の注意点
パートタイムや有期労働契約の従業員に対しては、雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口を整備し、労働条件通知書にも明示する必要があります。
交付のタイミング
労働条件通知書は、「労働契約締結に際して」交付するものと定められています。具体的には次の4つのケースが考えられます。
- 新規契約時(採用内定時・入社時)
- 有期労働契約の更新時
- 労働条件の変更時
「採用の内定」は、「始期付解約権留保付労働契約」が成立している、とされた判例があります。
採用内定により労働契約が成立していると解される場合は、入社前の者に対しても、労働条件通知書を書面で交付しなくてはなりません。
採用内定時点で具体的な就業場所や従事すべき業務等を特定できない場合には、想定される内容を包括的に示し、具体的に特定できなかった事項は、就労の開始前のできる限り早期に決定するよう努め、決定し次第改めて明示するようにしましょう。
個別具体的に総合的に判断されますが、次のようなケースでは「労働契約が成立している」と解されます。
- 他の企業の求人に対する応募を辞退し、内定会社の求めに応じて、
- 入社誓約書を提出し、
- 近況報告を行った。
- 採用内定通知のほかに労働契約締結ための特段の意思表示をすることが予定されていなかった。
交付の方法
労働条件の明示は原則として書面での交付が必要です。
労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、LINEなどのSNSメッセージ機能などによる電子交付も認められています。
| 原則 | 書面で交付 |
| 労働者が希望した場合 | 出⼒して書面を作成できる以下のもの。 ・FAX ・電子メール ・SNSメッセージ機能 |
電子的な方法によって交付する場合は、労働者がその内容をプリントアウト(印刷)できる状態でなければならない点に注意が必要です。SNSメッセージ機能などの方法で交付する場合は、PDFで添付すると良いでしょう。
罰則
労働条件通知書による労働条件の明示を怠った場合は、労働基準法第15条違反として、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
参考:労働基準法第120条
Q&A
Q:労働条件通知書はいつ交付するもの?
労働契約の締結の際に交付します。
採用内定時でも、「労働契約が成立している」と解されるときは書面で交付する必要があります。
また、試用期間前後で賃金などの労働条件が変わる場合は、交付する際に、試用期間前と後の内容を併せて明示するか、もしくは、それぞれのタイミングで交付するようにしましょう。
Q:有期労働契約の更新回数の上限、通算契約期間の上限は、何を明示したら良い?
労使の認識が一致していれば、次のいずれを明示しても差し支えありません。
- 契約の当初から数えた回数
- 残りの契約更新回数
混乱を避ける観点からは、契約の当初から数えた「更新回数」又は「通算契約期間の上限」を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示すと良いと考えられます。
Q:無期転換申込機会の明示は、権利を行使しない労働者に対してもすべき?
本人の意向にかかわらず、該当する更新タイミングでは必ず書面で明示しなければなりません。
Q:契約を更新する際は条件が同じでも労働条件通知書を発行すべき?
有期労働契約の更新の際は、労働契約期間が変わります。その他の労働条件が全く同じであっても、新たな労働契約期間を明示した労働条件通知書を、書面で交付する必要があります。
Q:テレワーク実施時の「就業場所」は明示すべき?
テレワークを行うことが通常想定される場合は、テレワークを行う場所(自宅・サテライトオフィス等)を明示する必要があります。